孤独死現場の特殊清掃費用相場を解説!費用負担は誰?相続放棄はできる?
2025.04.06(最終更新日)

✔ 孤独死現場の特殊清掃相場費用
✔ 孤独死が発生した部屋の費用負担者
✔ 孤独死現場特殊清掃費用の相続可否
近年、高齢化社会の進行や単身世帯の増加に伴い、一人で亡くなる「孤独死」のケースが増えています。残念ながら発見が遅れることも多く、その場合は特殊清掃が必要になることが一般的です。
「特殊清掃って何?」「費用はいくらくらいかかるの?」「誰が支払うの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。特に大家さんや故人のご家族にとって、突然直面するこの問題は精神的にも経済的にも大きな負担です。
この記事では、孤独死現場の特殊清掃にかかる費用相場や、誰が費用を負担するのか、相続放棄した場合はどうなるのかなど、費用面での不安や疑問にお答えします。これから対応される方の参考になれば幸いです。
孤独死が起きた部屋の特殊清掃費用の相場
孤独死が発生した部屋の特殊清掃費用は、状況によって大きく異なります。
ここでは、間取り別と作業内容別の費用相場をご紹介します。
間取り別の特殊清掃費用
特殊清掃の費用は、部屋の広さや間取りによって変わってきます。一般的な相場は以下の通りです。
・ワンルーム・1K/1DK:15万円~30万円程度
・1LDK/2K/2DK:20万円~40万円程度
・2LDK/3K/3DK:30万円~50万円程度
・3LDK以上:40万円~80万円程度
・戸建て住宅:50万円~100万円以上
「えっ、こんなに高いの?」と驚かれるかもしれません。しかし、これは基本的な清掃費用の目安です。実際には、発見までの期間や汚染の程度、追加作業の有無によって、さらに費用が変動することがあります。
例えば、発見が早く被害が限定的な場合は、上記の下限額に近い費用で済むことも。逆に、発見が遅れて広範囲に汚染が広がっている場合は、上限を超える費用がかかることもあります。
「うちの物件にぴったりの見積もりが知りたい!」という方は、複数の特殊清掃業者に相談して、具体的な見積もりを出してもらうことをおすすめします。業者によって料金体系が異なりますので、比較検討するとよいでしょう。
作業内容別の特殊清掃費用
特殊清掃の費用は、必要な作業内容によっても大きく変わってきます。主な作業内容と費用の目安は以下の通りです。
・汚染箇所の洗浄・除去
・消毒作業
・簡易的な消臭処理
・オゾン消臭
・特殊消臭剤の使用
・消臭機材のレンタル費用
・ハエやうじ虫の駆除
・ゴキブリなどの駆除
・予防処理
・フローリングの張替え
・カーペットの交換
・畳の交換
・汚染された壁紙の除去
・新しい壁紙の施工
・日用品の仕分け
・家具・家電の処分
・衣類の処分
孤独死現場では、目に見える汚れだけでなく、見えない部分の処理も重要です。特に発見が遅れた場合は、臭いや細菌が建材に深く浸透していることが多いため、徹底的な処理が必要になります。
ある程度時間が経過した孤独死現場では、上記の作業がすべて必要になることが多く、総額で30万円~100万円程度かかると考えておくとよいでしょう。
「予算が心配…」という方は、まずは特殊清掃会社に相談して、必要最低限の作業は何か、優先順位をつけて段階的に対応できないかなど、相談してみることをおすすめします。
特殊清掃の作業範囲
特殊清掃とはどんな作業をするのか、具体的な作業範囲を見ていきましょう。
費用の内訳を理解する上でも重要なポイントです。
汚物清掃
汚物清掃は特殊清掃の中核となる作業です。主に以下のような作業が含まれます。
・体液や血液が染み込んだ箇所の特定と除去
・特殊な洗剤や酵素剤を使用した洗浄
・汚染された建材(床材、畳、カーペットなど)の除去
・汚染物の適切な処理(医療廃棄物として処理)
汚物清掃は専門的な知識と技術、そして専用の装備が必要です。一般の清掃業者では対応できないため、特殊清掃の専門業者に依頼する必要があります。
「自分でできないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、感染症のリスクや適切な処理方法の観点から、素人が行うことは非常に危険です。プロの手に任せましょう。
消臭
孤独死現場で大きな問題となるのが強烈な臭いです。遺体から発生する臭いは建材に深く染み込み、通常の方法では除去できません。
特殊清掃における消臭作業には以下のようなものがあります。
・オゾン発生装置による消臭
・特殊消臭剤の散布
・脱臭機による処理
・必要に応じた建材(畳、床材、壁紙など)の交換
特に発見が遅れた場合、臭いは建材に深く浸透しているため、表面的な処理だけでは消えません。徹底的な消臭作業が必要になるため、相応の費用がかかります。
「臭いがなくなったかどうかわからない…」という不安もあるかもしれませんが、多くの特殊清掃業者は作業後の確認も丁寧に行い、必要に応じて追加の消臭作業も実施してくれます。
除菌
孤独死現場にはさまざまな細菌やウイルスが存在する可能性があります。健康被害を防ぐためにも、徹底的な除菌作業が必要です。
特殊清掃における除菌作業には以下のようなものがあります。
・医療現場でも使用される高濃度の消毒液の使用
・紫外線殺菌装置の使用
・特殊な除菌剤の散布
・抗菌コーティング
除菌作業は目に見えない部分の処理ですが、後々の健康被害を防ぐためにも非常に重要です。特に小さなお子さんやペットがいる家庭、また次の入居者のためにも、しっかりと行う必要があります。
害虫/害獣駆除
発見が遅れた孤独死現場では、ハエやウジ虫などの害虫が発生していることがあります。特に夏場は数日で大量の害虫が発生することもあります。
特殊清掃における害虫/害獣駆除には以下のようなものがあります。
・ハエやウジ虫の駆除
・ゴキブリなどの駆除
・ネズミなどの小動物の駆除
・再発防止のための予防処理
害虫は単に不快なだけでなく、衛生上の問題も引き起こすため、専門的な駆除が必要です。市販の殺虫剤では対応しきれないことが多く、プロによる徹底的な駆除が重要です。
特殊清掃以外にかかる費用は?
特殊清掃だけでなく、関連して発生する可能性のある費用についても押さえておきましょう。「思ったより費用がかさむな…」と感じるかもしれませんが、事前に知っておくことで心の準備もできます。
ゴミ屋敷だった場合の片付け
孤独死された方のお部屋がいわゆる「ゴミ屋敷」状態だった場合、特殊清掃の前にゴミの撤去や片付けが必要になります。この作業にも相応の費用がかかります。
・軽度のゴミ屋敷:5万円~15万円程度
・中度のゴミ屋敷:15万円~30万円程度
・重度のゴミ屋敷:30万円~50万円以上
ゴミの量や種類、部屋の広さによって費用は大きく変動します。特に腐敗した生ごみや危険物が含まれる場合は、特別な処理が必要になり、費用が高くなることがあります。
「ゴミ屋敷の片付けって特殊清掃に含まれないの?」と思われるかもしれませんが、多くの場合、特殊清掃とゴミ屋敷の片付けは別の作業として扱われます。ただし、特殊清掃会社の中にはゴミ屋敷の片付けも対応してくれるところも多いので、一括で依頼するとスムーズかもしれません。
遺品整理
孤独死現場には故人の遺品が残されています。これらを整理する「遺品整理」も必要な作業です。
・基本的な遺品整理:5万円~15万円程度
・大量の遺品がある場合:15万円~30万円程度
・貴重品や思い出の品の仕分けが必要な場合:追加料金が発生することも
遺品整理には、単なる片付けだけでなく、貴重品(現金、通帳、宝飾品など)の探索や、思い出の品(写真、アルバム、手紙など)の仕分けなども含まれます。大切なものを見逃したくないという思いがある場合は、その旨を業者に伝えておくとよいでしょう。
遺品整理は特殊清掃と同時に行うことも可能ですが、ご家族が立ち会いたい場合は別日程で行うこともできます。業者と相談しながら、最適なスケジュールを組みましょう。
不用品回収
遺品整理後に不要となった家具や家電、日用品などを処分する「不用品回収」も必要です。
・少量の不用品:2万円~5万円程度
・一般的な量の不用品:5万円~10万円程度
・大量の不用品:10万円~20万円以上
不用品の中には、家電リサイクル法対象品目(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど)が含まれることも多く、これらは特別な処理が必要なため、追加料金がかかることがあります。残すものと捨てるものを明確に分けておくと、不必要な費用を抑えることができます。事前に業者と打ち合わせをしておくとよいでしょう。
孤独死の清掃費用を左右する3つのポイント
孤独死の清掃費用は一律ではなく、さまざまな要因によって変動します。ここでは、費用を左右する主な3つのポイントについて解説します。
遺体が長く放置されていた場合は清掃費用が高くなる
孤独死で最も費用に影響するのが、発見までの期間です。「発見が遅れるとなぜ費用が高くなるの?」と思われるかもしれませんが、その理由はいくつかあります。
・汚染の広がり:時間の経過とともに体液が床や壁に広範囲に浸透します
・臭いの定着:腐敗臭が建材に深く染み込み、除去が困難になります
・害虫の発生:ハエやウジ虫が発生し、駆除が必要です
・建材の交換:汚染が深刻な場合、床材や壁材の交換が必要です
具体的な費用の違いを見てみましょう。
・1~3日の発見:基本料金の1~1.2倍程度
・1週間程度の発見:基本料金の1.5~2倍程度
・2週間以上の発見:基本料金の2~3倍以上
特に夏場は腐敗が早く進むため、発見の遅れがより大きな費用増加につながります。一人暮らしの方がいる場合は、定期的な安否確認が重要です。
遺体が発見された場所により清掃費用は異なる
遺体が発見された場所によっても、清掃費用は変わってきます。「場所によって違うの?」と思われるかもしれませんが、それぞれの場所で対応が異なるためです。
・寝室や布団の上:比較的清掃は容易ですが、マットレスや布団の処分が必要です
・浴室やお風呂場:水回りは汚染が広がりにくい反面、湿気で腐敗が早く進むことも
・トイレ:狭い空間で作業しにくく、便器周りの徹底清掃が必要です
・キッチン:設備が多く、細かい部分の清掃に手間がかかります
・リビング:広い空間で汚染が広がりやすく、家具なども処理が必要になります
床材の種類によっても費用は変わります。
・フローリング:隙間に汚染が入り込みやすく、部分的な張替えが必要になることも
・畳:液体を吸収しやすく、交換が必要になることが多いです
・カーペット:完全に汚染を除去するのが難しく、交換が基本となります
・クッションフロア:比較的清掃は容易ですが、隙間から下地に染み込むことも
「うちの物件はどうかな…」と心配される大家さんも多いと思いますが、実際に現場を確認してみないとわからない部分も多いです。特殊清掃業者による現地調査が重要になります。
孤独死をした住まいが広いほうが清掃費用は高くなる
当然ながら、住まいの広さも費用に大きく影響します。「部屋が広いと単純に費用も上がるの?」というと、そうとも限りません。清掃が必要な範囲によって変わってきます。
・汚染が一室に限定:その部屋の広さや状態によって費用が決まります
・複数の部屋に汚染が広がっている:対象となる部屋すべての清掃が必要になります
・共用部分(廊下、階段など)にも影響:建物全体の対応が必要になることも
例えば、1Kのアパートと3LDKの一戸建てでは、単純に床面積の違いだけでなく、壁や天井の面積、設備の数なども異なるため、費用に差が出ます。
「広い家だと費用が心配…」という方もいるかもしれませんが、実際に汚染されている範囲が限定的であれば、それほど費用は上がらないこともあります。正確な見積もりのためには、専門業者による現地調査が不可欠です。
特殊清掃費用は相続放棄できる?
孤独死の特殊清掃費用について、相続に関する疑問を持つ方も多いでしょう。ここでは、相続放棄と特殊清掃費用の関係について解説します。
特殊清掃費用は相続放棄できる?
「相続放棄すれば特殊清掃費用を支払わなくてよいのでは?」と考える方もいるかもしれません。
特殊清掃費用が「相続債務」に該当するかどうかで考え方が分かれます。
1. 故人が生前に特殊清掃を依頼していた場合:明らかに相続債務となるため、相続放棄すれば支払い義務はなくなります
2. 故人の死後に発生した特殊清掃費用:厳密には相続債務ではなく、「死後事務」と考えられることがあります
「死後事務って何?」と思われるかもしれませんが、これは故人の死後に発生する、葬儀費用や特殊清掃費用などの費用を指します。相続放棄をしても、これらの費用の支払い義務が完全になくなるわけではないとする考え方もあります。
「じゃあ、どうすればいいの?」という疑問に対して、以下のような対応が考えられます。
・相続放棄を検討する前に、故人の財産(預貯金など)から特殊清掃費用を支払うことができないか確認する
・法律の専門家(弁護士など)に相談し、具体的なケースに応じたアドバイスを受ける
・特殊清掃業者と支払い方法や分割払いなどについて相談する
相続放棄はした方がいい?
「相続放棄すべきかどうか」という問いに対する答えは、状況によって異なります。以下のポイントを考慮して判断するとよいでしょう。
・故人に借金や債務がある場合:借金額が遺産額を上回る場合は、相続放棄を検討する価値があります
・特殊清掃費用だけが問題の場合:故人に十分な遺産があれば、それを活用して支払うことも検討できます
・感情的な側面:相続放棄は法的手続きだけでなく、感情的な側面も伴います
相続放棄のメリットとデメリットを簡単に整理すると次のようになります。
・故人の借金や債務を相続しなくて済む
・将来的に判明した債務についても支払い義務を負わない
・故人の財産(プラスの資産)も一切相続できなくなる
・相続放棄の手続きに時間と手間がかかる(家庭裁判所での手続きが必要)
・感情的な負担が生じることもある
「相続放棄のタイミングは?」という質問もよくありますが、相続の開始(=故人の死亡)を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります。期限を過ぎると、原則として相続を承認したとみなされますので注意が必要です。
相続放棄は重要な法的手続きですので、不安や疑問がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。「専門家に相談するのもお金がかかる…」と思われるかもしれませんが、将来的なトラブルを防ぐためには適切な判断が重要です。
まとめ
孤独死現場の清掃は専門知識と装備が必要なため、必ず特殊清掃業者に依頼しましょう。自力での対応は健康リスクや二次被害の恐れがあります。発見後は速やかに警察へ連絡し、特殊清掃会社へ相談することが重要です。
費用負担者は持ち家か賃貸かで異なるため、契約内容や保険を事前に確認しておくと安心です。業者によって料金が異なるため、複数の見積もりを比較し、適正価格で依頼しましょう。
また、万が一に備え、孤独死清掃をカバーする保険の加入も検討を。どうすればよいかわからない場合は、経験豊富な専門業者に相談するのが最善の選択です。