浴室やお風呂場で孤独死が起きた場合は特殊清掃が必要?料金や作業の流れを紹介
2025.05.15(最終更新日)

✔ 浴室で孤独死が起きた場合の対応方法
✔ 浴室の特殊清掃費用相場
✔ 孤独死現場でやってはいけないこと
浴室やお風呂場での不慮の事故や病気による孤独死は、発見が遅れることも多く、ご遺族にとって大きな心の負担となるだけでなく、現場の清掃という物理的な問題も発生します
。一般的な家庭用洗剤や清掃方法では対応できないケースも多く、特殊清掃業者への依頼が必要になる場合があります。 この記事では、浴室での孤独死が発生した際の状況や対処方法、特殊清掃の流れや費用について解説します。
目次
お風呂場で孤独死が発生した場合
お風呂場や浴室は、密閉空間で湿度が高く、温度変化も大きいという特徴があります。このような環境で孤独死が発生した場合、どのような状況になるのでしょうか。
浴室の状況
お風呂場での孤独死が発生すると、以下のような状況が生じることがあります。
1. 高温多湿による腐敗の早期進行
浴室は湿度が高く、温かい環境にあるため、通常の部屋と比べて腐敗の進行が早くなります。特に夏場は、数日でかなり深刻な状態に陥ることも少なくありません。
2. 体液の広範囲な拡散
浴室には水分が常に存在するため、体液が浴槽内や床全体に広がりやすくなります。また、タイルの目地や排水口などに体液が染み込みやすいのも特徴です。
3. 強い悪臭の発生
浴室は密閉された空間になりがちなため、発生した臭いがこもりやすくなります。さらに湿度が高いことが、臭いの拡散を一層促進してしまう原因です。
4. 浴槽の水質変化
浴槽に水が残っていた場合、体液と混ざることで水が変色したり、腐敗が進んだりします。そのまま排水管へと流れ込むと、浴室全体だけでなく広範囲に汚染が広がるおそれもあります。
5. 建材への影響
浴室に使われているタイルや目地、シリコンコーキングなどは、体液が染み込みやすい素材が多いのが特徴です。こうした多孔質な材質のため、汚染が深刻化しやすい点にも注意が必要です。
発見が遅れるほど、これらの状況は悪化します。特に水回りである浴室では、湿度と温度の影響で通常の部屋よりも早く腐敗が進むため、発見が1日遅れるだけでも状況は大きく変わります。
発見した場合の対処方法
浴室での孤独死を発見した場合、冷静な対応が必要です。以下の手順に従って行動しましょう。
1. まずは119番(救急)と110番(警察)に通報する
明らかに亡くなっているように見える場合でも、まずは必ず専門家の判断を仰ぎましょう。自分で「死亡している」と断定することはせず、救急隊の到着を静かに待つことが大切です。
2. 現場には極力触れない
死因の特定や検視を正確に行うためには、現場の状態をできるだけそのまま保つことが求められます。個人的な判断で片付けや清掃を始めるのは避けましょう。
3. 警察の指示に従う
警察による事情聴取や検視が行われることがありますので、現場では必ず指示に従うようにしましょう。現場検証が終わるまでは、清掃や片付けに手をつけることはできません。
4. 特殊清掃業者への連絡を検討する
警察による検視が終了した後は、清掃についての段取りを考えます。このとき、一般的な清掃業者ではなく、特殊清掃に対応できる専門業者へ相談することをおすすめします。
・自分で清掃を始めること
適切な防護をせずに清掃を行うと、健康上のリスクが高まる恐れがあります。
また、感染症のリスクも無視できませんし、作業を進める中で精神的なトラウマにつながる可能性もあります。
・水で流すだけの処理をすること
水で表面を洗い流すだけでは、汚れや臭いの原因を完全に除去はできません。
さらに、排水管を通じて汚染が広がってしまう恐れもありますので、注意が必要です。
・市販の洗剤だけで対応しようとすること
一般家庭向けの洗剤では、消毒や除菌が不十分になるケースが多いです。
特殊清掃には、プロ専用の強力な薬剤や技術が必要になることがほとんどです。
・現場の状況を写真撮影すること
故人の尊厳を守るためにも、現場を安易に撮影することは控えましょう。
後から見返したときに、自分自身にとって大きな精神的負担になる可能性もあります。
・警察の許可なく遺品を移動させること
遺品を勝手に動かしてしまうと、警察による検視や死因究明の妨げになることがあります。必ず、警察の指示があるまでそのままの状態を保つことが大切です。
浴室で孤独死を発見した場合は特殊清掃業者へ
浴室での孤独死現場の清掃は、専門知識と経験を持つ特殊清掃業者に依頼することを強くお勧めします。その理由は以下の通りです。
1. 健康リスクの回避
特殊清掃では、専門の防護服や装備を使用して作業が行われます。
2. 適切な消毒・除菌処理
専用の薬剤を使って、目に見えない細菌やウイルスまで徹底的に除去します。
3. 臭いの完全除去
特殊な消臭剤やオゾン発生装置を活用し、浴室特有の密閉された空間でも効果的に脱臭を行います。
4. 専門的な建材処理
タイルの目地や排水口といった細部に至るまで、徹底した洗浄を行います。
5. 心理的負担の軽減
遺族が自ら清掃に関わることによる精神的なストレスを避けることができます。
特殊清掃業者は、単なる清掃だけでなく、故人の尊厳を守りながら遺族の精神的負担を軽減するプロフェッショナルです。浴室という特殊な環境での孤独死清掃には、専門的な知識と経験が不可欠です。
浴室の孤独死の特殊清掃の流れ
浴室での孤独死現場の特殊清掃は、一般的な清掃とは全く異なる手順と方法で行われます。その流れを詳しく見ていきましょう。
体液や血液のふき取り
1. 専用の防護服を着用
作業にあたっては、全身を覆う防護服を着用します。
2. 専用の吸収剤の使用
体液や血液が液体状になっている場合は、専用の吸収剤を使用して固形化します。
3. 一方向へのふき取り
拭き取り作業は、汚染を広げないよう一方向に向かって行います。
4. 回収物の適切な処理
回収した汚染物は、感染性廃棄物として専用の容器に密閉します。
この段階では、表面的に見える汚染物の除去が中心ですが、単に拭き取るだけではなく、汚染を広げないための専門技術が用いられます。
腐敗物の除去
次に、腐敗物の徹底的な除去作業が行われます。
1. 浴槽内の水や残留物の処理
浴槽内に残った水や腐敗物は、特殊なポンプや吸引機を使って回収します。
2. 排水口や配管の洗浄
排水口や配管については、専用の洗浄剤を使用して徹底的に洗浄します。
3. タイルの目地やシリコン部分の処理
汚染が及んだタイルの目地は除去し、必要に応じてシリコンコーキングを打ち替えます。
4. 取り外し可能な部品の洗浄または交換
シャワーヘッドや蛇口など、取り外し可能な部品は分解して洗浄します。
腐敗物の除去は、単に表面を綺麗にするだけでなく、目に見えない部分にまで及ぶ徹底的な処理が必要です。特に排水口や配管は、体液が浸透しやすく、臭いの原因になりやすい部分です。
消臭や除菌
体液や腐敗物の除去が完了したら、消臭と除菌の処理に移ります。
1. 専門的な消毒剤の使用
消毒作業には、医療施設でも使用されるレベルの強力な消毒剤を使用し、細菌やウイルスを完全に死滅させます。
2. オゾン発生装置による脱臭
オゾン発生装置を使い、強力な酸化力で臭いの原因となる分子を分解しながら、浴室全体の空気を浄化します。
3. 紫外線照射による殺菌
さらに、紫外線ライトを照射することで、目に見えない微生物も徹底的に除去します。
4. 特殊コーティングの施工
最後に、抗菌・防臭効果のある特殊コーティングを施し、再発生を防止するための保護層を形成します。
消臭や除菌の段階では、目に見えない微生物の完全な除去が目的です。特に浴室は湿度が高いため、カビや細菌が繁殖しやすい環境です。
浴室清掃の注意点
浴室の特殊清掃には、他の部屋にはない独特の注意点があります。
1. 水回りならではの汚染拡散防止
排水経路を通じて汚染が広がることを防ぐため、慎重に作業を行います。
2. 湿度対策
浴室内の乾燥を促進するため、換気扇を継続的に使用したり、除湿機を設置したりして湿度管理を行います。
3. 多孔質材質への対応
タイルや目地といった多孔質の部分には、専用の特殊清掃を施し、内部に浸透した汚染物も完全に除去します。
4. 配管系統の確認
浴室と隣接する洗面所や洗濯機置き場にまで汚染が及んでいないかを確認し、共用配管がある場合は特に慎重な対応を行います。
5. 電気系統の安全確保
水を多く使用する環境のため、漏電事故を防ぐために電気機器を適切に保護し、安全を確保します。
浴室の特殊清掃では、水と電気を扱う危険な作業が多く含まれるため、専門的な知識と経験が不可欠です。
浴室の特殊清掃料金
浴室での孤独死に伴う特殊清掃の料金は、状況によって大きく異なります。一般的な料金相場と変動要因について見ていきましょう。
浴室の特殊清掃における一般的な料金相場は以下の通りです。
・軽度の汚染(発見が早いケース):10万円〜15万円
・中度の汚染(数日経過したケース):15万円〜25万円
・重度の汚染(発見が1週間以上遅れたケース):25万円〜40万円以上
これらは浴室単体の清掃料金の目安であり、隣接する脱衣所や洗面所なども含める場合は、追加費用が発生します。
特殊清掃の料金は、以下の要因によって変動します。
1. 発見までの経過時間
・発見が早いほど料金は抑えられるが、1週間以上経過すると大幅に上昇
2. 季節要因
・夏場(6月〜9月)は腐敗が早く進むため10〜20%増
・冬場でも浴室は湿度が高いため他の部屋より影響は小さい
3. 浴室の広さと構造
・ユニットバスか在来工法かで難易度が異なる
・広さや設備の複雑さによる変動
4. 建材の交換の必要性
・タイルの目地交換:3万円〜5万円
・シリコンコーキング打ち替え:2万円〜4万円
・排水トラップ交換:1万円〜3万円
5. 特殊機材の使用
・オゾン発生装置:2万円〜3万円
・高圧洗浄機使用:1万円〜2万円
・特殊消毒・消臭剤:1万円〜3万円
6. 緊急対応や時間外対応
・即日対応:基本料金の10〜30%増
・深夜・早朝対応:基本料金の20〜50%増
・休日対応:基本料金の10〜20%増
料金の見積もりを依頼する際は、複数の業者から詳細な見積もりを取ることをお勧めします。また、見積もり内容が明確で、追加料金の発生条件が明示されている業者を選ぶことが重要です。
浴室の状態によってはリフォームが必要になる
特殊清掃だけでは対応できないケースもあります。どのような状況でリフォームが必要になるのでしょうか。
以下のような状況では、部分的または全面的なリフォームが必要になる可能性があります。
1. 体液が建材深部まで浸透している場合
2. 長期間の放置による腐食や劣化
3. カビや細菌の深刻な繁殖
4. 強い臭いが除去できない場合
5. 精神的な観点からの刷新
状況に応じて必要となるリフォームの種類と一般的な費用相場は以下の通りです。
・浴槽の交換:15万円〜30万円
・床材の交換:10万円〜20万円
・壁パネルの交換:10万円〜25万円
・水栓金具の交換:3万円〜10万円
・1216サイズ(0.75坪):50万円〜80万円
・1317サイズ(0.8坪):55万円〜85万円
・1616サイズ(1坪):60万円〜90万円
・1坪以上:70万円〜100万円以上
・0.75坪程度:70万円〜100万円
・1坪程度:80万円〜120万円
・1坪以上:100万円〜150万円以上
これらの費用には、既存浴室の解体・撤去費用、新しい浴室の設置費用、および工事費が含まれます。また、水道・電気工事が複雑になる場合や、配管の移設が必要な場合は、さらに費用が増加することがあります。
リフォームを検討する際は、特殊清掃業者だけでなく、浴室リフォームの専門業者にも相談することをお勧めします。特殊清掃とリフォームの両方に対応できる業者も増えていますので、一貫したサービスを提供してくれる業者を選ぶとスムーズに進めることができます。
まとめ
浴室やお風呂場での孤独死は、高温多湿という特殊な環境のため、発見の遅れによる状況の悪化が早く進みます。発見した場合は、自己判断での清掃を避け、まずは警察や救急に通報し、その後に特殊清掃業者への相談が重要です。
大切な方の最期の場に対する清掃は、専門家の手によって適切に行われることで、残された方の精神的負担を少しでも軽減できます。特殊清掃業者選びには、見積もりの明確さや対応の丁寧さを重視し、信頼できる業者に依頼することをお勧めします。