賃貸物件で孤独死が起きた場合の特殊清掃の流れは!?特殊清掃事例や料金を紹介

2025.09.01(公開日)
2025.09.01(最終更新日)
賃貸物件で孤独死が起きた場合の特殊清掃の流れは!?特殊清掃事例や料金を紹介
この記事で分かること

✔ 特殊清掃が必要な理由

✔ 賃貸物件の現状回復は義務

✔ 賃貸物件の特殊清掃費用の支払い責任者

身内の方が賃貸物件で孤独死した状態で発見され、どのように対応すべきか分からず困っていませんか。

賃貸物件での孤独死は、ご遺族にとって大きな心の負担となるだけでなく、原状回復や清掃費用といった現実的な問題も避けて通れません。

一般的な清掃業者では対応が難しいケースが多く、ほとんどの場合は特殊清掃業者への依頼が必要です。

この記事では、賃貸物件で孤独死が発生した際にまず取るべき対応から、特殊清掃の具体的な流れ、料金の目安や費用負担について解説します。少しでも適切な判断の参考になれば幸いです。

賃貸物件での特殊清掃の流れ

賃貸物件で孤独死が発生した場合、どのような手順で対応すれば良いのでしょうか。あらかじめ流れを把握しておくことで、混乱せず冷静に対処できます。

発見したらまず警察に連絡

賃貸物件で孤独死を発見した場合、最初にすべきことは警察への通報です。明らかに亡くなっているように見えても、必ず110番(警察)と119番(救急)の両方に連絡してください。

自分で「死亡している」と判断するのは避け、必ず専門家の確認を待ちましょう。なお、管理会社や大家さんが異変に気づいて入室する場合でも、マスターキーを使った無断入室は不法侵入に該当する恐れがあります。

警察の立ち会いのもとで室内を確認し、その後に事情聴取や検視が行われます。これは法的に必要な手続きであり、現場検証が終わるまでは清掃や片付けを始めることはできません。

また、入居者の連帯保証人や緊急連絡先にも速やかに連絡し、状況を共有しておきましょう。事件性がないと判断された場合に「孤独死」として扱われ、次の段階に進むことが可能になります。

すぐに特殊清掃業者へ見積もり依頼

警察による現場検証が終了したら、速やかに特殊清掃業者へ連絡することが大切です。特に発見まで時間が経過している場合や夏場のケースでは、体液による汚染・強烈な腐敗臭・害虫発生 が進んでいる可能性が高く、迅速な対応が不可欠です。

時間が経過すればするほど汚染が拡大し、清掃費用も高額になる傾向があります。そのため、できるだけ早い段階で見積もりを依頼しましょう。複数業者に相談して比較検討することで、適正価格での依頼が可能になります。

見積もりを取る際には、以下の情報を正確に伝えることが重要です。

発見までの経過日数

部屋の間取り

汚染の程度

臭いの強さ

これらを伝えることで、より正確な見積もりを受けられます。

また、賃貸物件の場合は管理会社や大家さんとの連携も欠かせません。原状回復の範囲や費用負担について事前にすり合わせておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。

孤独死が起きた賃貸物件で特殊清掃が必要な理由

なぜ孤独死現場では一般的な清掃業者ではなく、特殊清掃業者への依頼が必要なのでしょうか。ポイントを順に見ていきます。

孤独死現場は自分では清掃ができない

孤独死現場では、腐敗によって発生した体液や血液が床材や壁材に浸透し、感染源です。適切な防護装備や手順なしに触れると、感染症のリスクが高まります。

さらに、強烈な腐敗臭は建材の奥深くまで染み込み、市販の消臭剤や拭き取りでは解決できません。処理を誤ると体液がさらに床下や壁内へ拡散する恐れもあります。

通常清掃業者でも難しい場合が多い

一般的なハウスクリーニング業者は生活汚れへの対応が中心であり、医療レベルの消毒や感染性廃棄物の処理を前提としていません。

孤独死現場では、強力な消毒剤や専用の消臭剤、オゾン発生器・高圧洗浄機といった専門機材、さらに完全防護服による安全対策が不可欠です。

これらが不足したまま作業を行えば、清掃が不完全になったり、汚染を広げたりするリスクがあり、結果的に費用や作業時間が増大します。

感染症のリスクがある

遺体の腐敗で発生する体液や血液には、肝炎ウイルスやHIVなどの血液媒介病原体、細菌・ウイルスが含まれている可能性があります。乾燥後でも感染力を保つことがあり、接触だけでなく微粒子の吸入や環境表面からの間接感染も懸念されます。

特殊清掃業者はリスク評価に基づいた防護措置をとり、汚染の封じ込め、段階的な消毒、法令に従った廃棄物処理を一貫して実施します。これにより、作業員や居住者、近隣への二次被害を防ぎながら安全に原状回復を行うことができます。

心理的負担が大きい

現場の状況や強い臭気は、視覚・嗅覚の両面で強い衝撃を与えます。ご家族が作業に関わると、悲嘆が深まったり、後にトラウマや睡眠障害として残ることもあります。

専門業者に任せることで、故人の尊厳に配慮した適切な処置が行われ、ご家族は必要な手続きや心身のケアに集中できます。結果として、精神的負担の軽減と再発防止を含む確実な原状回復の両立が可能になります。

賃貸物件の原状回復義務

賃貸物件で孤独死が発生した場合、原状回復義務をどう考えるべきか正しく理解しておくことが重要です。ここでは、大家さんとの相談の進め方や、特殊清掃業者に依頼すべき理由について解説します。

大家さんと相談しながら進める

孤独死が起きた場合、原状回復の責任範囲について大家さんや管理会社と十分に話し合う必要があります。

原状回復義務とは、賃貸契約終了時に「借り始めたときの状態」に戻すことを意味しますが、孤独死の場合は通常の退去とは大きく事情が異なります。

契約内容や汚染の範囲によって結論が異なるため、清掃範囲やリフォームの要否、費用分担などについて事前に合意形成を図ることが大切です。話し合いの際には、特殊清掃業者の見積書や現場調査報告書を参考にしながら、客観的に進めるとトラブルを避けやすくなります。

原状回復範囲は特殊清掃業者に相談する

原状回復の具体的な範囲を判断するには、専門的な知識が不可欠です。体液や臭気の拡散範囲は外見だけでは分かりにくく、一般の方や大家さんだけで正確に判断することは困難です。

特殊清掃業者は現場を調査し、汚染の広がりを把握したうえで修繕が必要な箇所を明確にします。例えば、体液が床下にまで浸透していれば床材の交換が必須となり、臭気が壁の内部に残っている場合は壁紙の張り替えだけでは不十分です。

さらに、見落としやすいのが配管内部への汚染や天井裏への臭気の浸透、さらには隣室への影響といったケースです。こうした見えない問題まで正確に診断できるのは、特殊清掃の経験を持つ専門業者ならではの強みです。

賃貸物件の特殊清掃料金は誰が払う

賃貸物件で孤独死が発生し特殊清掃が必要になった場合、誰が費用を負担するのかは大きな問題です。ケースによって支払い義務者は異なるため、事前に整理しておきましょう。

連帯保証人の負担

賃貸契約に連帯保証人が設定されている場合、特殊清掃費用の負担が連帯保証人に及ぶことがあります。

連帯保証人は入居者と同等の責任を負うため、原状回復費用も請求対象となるケースが多いのです。

ただし、孤独死による汚損が「通常使用を超える損耗」に当たるかどうかは状況によります。自然死や病死は「予見できない事故」として扱われ、保証人の負担が軽減される可能性もあります。

契約書の確認が必須:特殊清掃に関する条項があるかどうかをチェック

保証会社の特約:加入している場合、清掃費用が補償されるケースもある

連帯保証人への請求はトラブルになりやすいため、契約内容を確認した上で冷静に話し合うことが重要です。

法定相続人の負担

入居者に相続人がいる場合、特殊清掃費用の支払い義務は相続人に引き継がれます。

賃貸借契約は相続対象となるため、未払い家賃や原状回復義務も相続人が負うことになります。

相続放棄をすれば免責:死亡を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きが必要

複数相続人の場合:法定相続分に応じて費用負担を分割

保険の確認:故人が加入していた火災保険・生命保険で清掃費用がカバーされる場合あり

相続人にとっては突然の費用負担となるため、放棄の可否や保険の利用を早めに検討することが重要です。

物件オーナーが負担

連帯保証人や相続人がいない場合、または相続放棄が行われた場合、最終的に特殊清掃費用を負担するのは物件オーナーです。

オーナー側の対策としては以下が有効です。

孤独死保険・家主保険:特殊清掃費用やリフォーム費用、家賃損失、遺品整理費用を補償(保険料は月額数千円程度が一般的)

保証会社の特約:孤独死による清掃費用を一部または全額補償するケースもある

オーナーにとって孤独死は「賃貸経営リスク」の一つ。事前の備えによって突発的な費用負担を防ぎ、安定経営につなげることが可能です。

特殊清掃料金の負担を軽減する方法

特殊清掃にかかる費用を少しでも抑えるためには、早期対応が何より重要です。ここでは、費用負担を軽減するための具体的なポイントを解説します。

発見したらすぐに特殊清掃業者へ連絡する

最も効果的なのは、発見直後に特殊清掃業者へ連絡することです。時間が経つほど汚染が広がり、清掃の難易度も費用も大幅に上昇します。

発見が早いほど費用が安い

死後3日以内の発見なら比較的軽度で済みますが、1週間以上経過すると清掃費用が2〜3倍に跳ね上がることもあります。体液が床や壁に浸透すれば、建材の交換が必要になるためです。

夏場は特に注意

高温多湿の環境では腐敗が急速に進み、わずか数日で深刻な汚染に至ることがあります。

害虫の発生を未然に防ぐ

早期対応により、ウジ虫やハエの発生を抑えられます。害虫が大量発生すれば駆除費用や追加作業が必要になり、結果的に費用が増加します。

多くの特殊清掃業者は24時間対応しているため、早急に連絡することで被害を最小限に抑えられます。

賃貸物件の特殊清掃料金相場

賃貸物件での特殊清掃にかかる料金は、間取りや汚染の程度、必要な作業内容によって大きく変動します。ここでは一般的な相場感を整理して解説します。

間取りによって料金は変わる

1R~1K:10万〜25万円程度

狭い空間でも汚染が集中するため密度の高い作業が必要です。夏場は腐敗が進みやすく、床や壁に体液が浸透するケースも多く、建材撤去が必要になれば費用は上がります。

1LDK〜2LDK:15万〜35万円程度

部屋ごとに汚染度が異なることが多く、清掃・消臭に時間がかかる場合があります。比較的軽度なら2日程度で作業完了するケースもあります。

1LDK〜2LDK:15万〜35万円程度

部屋ごとに汚染度が異なることが多く、清掃・消臭に時間がかかる場合があります。比較的軽度なら2日程度で作業完了するケースもあります。

3LDK〜4LDK:25万〜50万円程度

広さに加え、複数の部屋に汚染が及ぶケースが多いため、調査・計画に基づいた大掛かりな作業が必要です。死臭が家全体に広がっている場合は、消臭処理に時間と費用がかかります。

5LDK以上:40万〜80万円以上

作業範囲が広く、数日〜1週間以上かかることもあります。二世帯住宅や戸建てでは床下・屋根裏にまで汚染が広がるケースもあり、専門的対応が求められます。

特殊清掃範囲によって料金は変わる

特殊清掃の料金は「汚染の程度」「季節」「追加作業」の3つで大きく変わります。

  1. 発見までの時間
  2. 死後3日以内:軽度な清掃で済むケースが多い
  3. 1週間以上:腐敗が進行し、床や壁紙の交換・大規模な消臭作業が必要になり、費用が大幅に増加
  4. 季節の影響
  5. 夏場(6〜9月):腐敗や害虫の発生が早く、料金が10〜20%高くなる傾向
  6. 冬場:暖房の影響で腐敗が進む場合もあり、油断は禁物
  7. 追加費用の目安

現場の状況によっては、以下のような追加費用が発生します。

  • オゾン脱臭:1日あたり約3万円(重度臭気では複数日必要)
  • 害虫駆除:1万〜5万円(発生量に応じて変動)
  • 建材交換:畳1枚3,000〜5,000円、壁紙1㎡あたり1,000〜2,000円
  • 特殊機材使用:高圧洗浄機 1〜2万円、特殊バキューム 2〜3万円
  • 緊急・時間外対応:基本料金の10〜50%割増

追加費用は現場の状況によって大きく変わりますが、事前に見積もりを取れば想定外の請求を避けることができます。特に「どの作業が基本料金に含まれるか」「どこから追加費用になるか」を確認しておくことが、後々のトラブル防止につながります。

まとめ

賃貸物件で孤独死が発生した場合は、まず警察へ通報し、その後は速やかに特殊清掃業者へ相談することが重要です。一般的な清掃業者では対応できない汚染や強烈な臭気、感染症リスクが存在するため、専門業者による適切な処理が不可欠です。